彼の状況には同情の余地がある。これまでの日本の銀行なら、彼が役員になれていた可能性は、少なくともいまよりはずっと高かったはずである。ところが、合併によって、役員になれる確率がガクンと落ちてしまった。そもそも、わずか十年前までは二桁の都市銀行があったのに、それが三菱東京UFJ・三井住友・みずほ・りそなの四行にまで減り、日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行といった名門銀行の名前が消滅してしまうなど、誰も想像できなかったはずだ。
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おまけに、役職が上がれば給与も上がるのが当たり前だった銀行業界で、年収がかつての六割になってしまうなんて、悪夢以外の何物でもないだろう。しかし、彼には冷たいようだが、いまさら「こんなはずじゃなかった」と気がついて、あれこれ悩むようでは遅いのである。さらにいえば、五十代半ばに近づいても、自分の進む道を自分で決められないこと自体に、彼の悲劇(あるいは自業自得)がある。